第2話「大日向マルシェの根っこ」 小山ヒロコさん
- somarushouhei
- 7月2日
- 読了時間: 4分

今回お話を伺ったのは、小山ヒロコさん、大日向マルシェの発起人です。
小山さんは、2011年7月に大日向マルシェを立ち上げました。マルシェをコーディネートするのが役割で、出店者を集めたり、宣伝したり、利用者の皆さんが心地よく過ごせるような「代表兼、調整役」として、裏方の仕事を引き受けていました。
マルシェ当日の小山さんは、お店を出していません。
あの店この店色々お買い物して、とにかくたくさんおしゃべりしています。
最後は時間が足りなくて、走ってお買い物するのがパターンです。
商品の事だけでなく、日々のでき事や相談事まで、まるで久々に会った友人のように会話を楽しんでいます。
大日向では、そんな小山さんですが、普段の顔(なりわい)は、夫の大工さんとご夫婦で、お家を造ったり、直したりする仕事をしています。
小山さんは、依頼主がどうやって暮らすのか?生きるのか?
大切にしていることは何か?どんな暮らし方をしたいのか?
話を聞いたり、現状を見せてもらったりしながら、よりよい生活を想像してプランニングし、創造するため材料を選び、準備します。
ん?それって大日向マルシェを始めたときの、小山さんのしたことと同じようなこと…
と思い至ります。
「大切な暮らしのために必要だと思えること」を求めてマルシェという場を想像し、出店者を探して歩いた始まりと。

―求めているマルシェのカタチ
「できるだけローカルで賄える、できる限り生活に根付いたマルシェだといいなぁと思う。近くでできるものを食べたり使ったりすれば、それだけでも省エネで環境負荷を軽減できるし、身土不二の考えで大切な食の文化から離れない暮らしをしていたい。」
「出店してくださる方たちは、自然の理を無視しないという点で共通し、仕事を通してそれぞれのテーマ(課題)の共有をしてくださっています。そんな中でつくったものを分けてもらっていると、かけてくれた時間や手間に自然と感謝の気持ちが湧いてくるんです。交換しているのはモノとお金だけではないなと感じます。
そんな風に、小山さんは大日向マルシェを語ります。

―自分にちょうど良いしあわせのある場所へ
「貨幣経済の価値観に合わせた暮らしに当たり前に馴染んでいるのですが、必要なものをその時あるものでつくったり、持っている人と交換し合ったりできる割合を増やしていきたいなぁと思います。今が90%:10%だとしたら、50%:50%くらいに持っていけたらうれしい。自分のための時間10%から50%へ増量の気分と近い感覚かもしれない。とりわけ優れたものを作る技術はないですけど、自分や家族が満足できるくらいの出来でいいし、それで笑っている時間が増える方が幸せだというのは実感しています。」
「それでも、お金で交換する先として、例えば、大日向マルシェや有機農家との提携(CSA)などの所が大事だなぁと思うのは、つくり手の考えを受け取りながら自然軸で考えてものを選ぶことができるから。そして、私が労働の対価としていただいたお金を手渡す先に、自分の暮らしを助けてくれる人がいることも意識できるからです。そう感じられる環境があることは、本当にありがたいことだと思います。

―大日向マルシェは自分にとっても大切な場所だったんです
「大日向マルシェは、東京電力の原発事故の年に始まりました。誰もが不安を抱えながらのスタートでしたが、出店してくれる方たちに快く協力してもらえたことで、生き抜く力を信じようと思えました。
考えに共感してくれて、ここまで続けてきてくれている関係者の皆さんに、言い表せないくらいの感謝の気持ちがあります。始めた後は、少しずつ自分の暮らしの中に感じる矛盾を解決していくことに、気持ちを向けていきました。大日向マルシェをきっかけに出会った方たちとの関りで学ぶことは多く、今も自分の仕事や暮らしのあり方を止まらず問い続けるように気持ちを向けてくれます。」
とは言え、日々の忙しさの中で効率重視から抜け出せなくなって、心も苦しくなってしまう。そんな時、「自然の理を無視しない」感覚を自身が取り戻す場に、大日向マルシェがなっていると言います。

小山さんは今、大日向マルシェの「サポーター」として支えてくださっており、裏方の仕事は出店者でつくった事務局(ワーカーズ)が引継ぎ運営しています。
ただ、生産者であり利用者であり、運営もする私たちは、時々方向感覚を失います。
考え方だってそれぞれ違い、迷います。悩みます。話し合います。
目の前の課題にとらわれすぎたとき、大日向マルシェの根幹はどこにあるのか?
目指すべき空はどこか?少し離れた視点で共に考えてくれています。

この1年、何度も小山さんには話しを伺いました。
さくっとは語り尽くせない大日向マルシェの根っこを、これからのインタビュー企画を通して感じていただければと思います。
文:梨本あぶらや 鈴木朝子
写真:ATELIER SO_MARU 金井翔平
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